こんにちは、日帰り腹腔鏡手術を専門とする広島アルプスクリニックです。
本日は全身麻酔中に覚醒することがあるのか、という疑問に答えます。
全身麻酔の術中覚醒とは?
全身麻酔中の術中覚醒(Intraoperative Awareness)は、手術中に患者様が部分的に意識を取り戻し、周囲の出来事を覚えているという現象です。この現象は頻度は低いものの、患者様にとって大きな不安やトラウマを引き起こす可能性があります。複数の研究によれば、全身麻酔を受けた患者様の約0.1〜0.3%が術中覚醒を経験しているとされています。
術中覚醒のリスクの程度
術中覚醒の発生率は非常に低く、一般的には1,000件の全身麻酔のうち1〜2件の割合で発生すると報告されています。米国における大規模研究では、全体の0.13%の患者が術中覚醒を経験していると報告されており、年間26,000件の術中覚醒が発生していると推定されています。
この現象は、手術の種類や患者様の健康状態、麻酔の管理方法によってリスクが異なります。
ハイリスクな患者様と状況
特定の条件下では、術中覚醒のリスクが高まります。以下にリスク要因を挙げます:
- 身体的状態が悪い患者様(ASAステータスIII〜V):健康状態が悪い患者様では、麻酔薬の使用量が制限されることがあり、それにより覚醒リスクが増加します。
- 大型手術や長時間に及ぶ手術:腹部や心臓手術などの大規模な手術では、術中覚醒のリスクが高くなります。
- 麻酔の軽減:術後の合併症を避けるため、麻酔薬の量が制限されることがありますが、その結果、覚醒が起こりやすくなることがあります。
- オピオイドや筋弛緩薬の併用:一部の薬剤の使用が術中覚醒のリスクを高めることが示唆されています。
術中覚醒によるデメリット
術中覚醒が発生すると、患者様にとって様々な心理的および身体的な悪影響を引き起こす可能性があります。多くの患者様は覚醒時に次のような体験を報告しています:
- 意識があるが身体が動かせないという感覚:多くの患者様が身体の動かせない恐怖感を抱きます。
- 痛みや不快感:一部の患者様は、手術の痛みを感じたと報告しています。
- 長期的なトラウマ:術中覚醒を経験した患者様の約50%が、その後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する可能性があるとされています。
予防策
術中覚醒のリスクを低減するためには、従来の麻酔管理に加えて、深度モニタリングを行うことが有効とされています。特に、脳波を使用したBispectral Index(BIS)モニターが注目されており、この技術を使用することで覚醒のリスクが減少することが示されています
まとめ
全身麻酔中にも覚醒してしまうリスクはあります。当院ではそのリスクをなるべく低減できるよう、麻酔は必ず麻酔科専門医が施行するようにしており、またBISモニターをつけて常に脳波をモニタリングしています。
患者様に、安全で安心できる日帰り手術を提供できるよう心がけております。